企業研究をしていると、「3年以内離職率」という数字を目にすることがあります。
離職率が低ければ安心できそうですし、反対に高ければ「入社して大丈夫なのだろうか」と気になってしまうものです。
3年以内離職率は、企業選びで軽く流していい数字ではありません。新卒で入社した人が、入社後の早い段階でどれだけ辞めているかを示す情報だからです。
特に、同じ業界の企業と比べても高い状態が何年も続いているなら、仕事内容や配属、働き方などに、新卒が早期に離職してしまう理由がないか確認しておいたほうがよいでしょう。
ただ、1年分の離職率だけを見て「この会社は危ない」と決めつけるのも早すぎます。
採用人数が少ない企業では、1人や2人辞めただけで離職率は大きく変わります。業界や企業規模によっても離職率の傾向は違いますし、ある年度だけたまたま高く、前後の年度は低いということもあります。
気にするべき数字だからこそ、雑に読まないことが大切なのです。
この記事では、離職率の割合だけを見るのではなく、「何人中何人か」「過去数年どう推移しているか」「近い企業と比べてどうか」まで確認したうえで、その企業をさらに調べるべきかを判断する方法を整理します。
この記事で判断できること
- 3年以内離職率をどの程度気にすればよいか
- 「離職率○%」と一緒に確認したい数字
- 過去数年の推移や業界平均との差の見方
- 離職率が高い企業をさらに調べるべきか判断する方法
3年以内離職率は企業選びで気にしたほうがよい数字
3年以内離職率は、新卒で入社した人が入社後3年以内にどれだけ離職したかを示す数字です。
会社全体の離職率とは違い、新卒入社後の早い時期に絞って見るため、これから新卒で入社する学生にとっては参考にしやすい情報です。
企業選びでは、給与や勤務地、仕事内容、福利厚生などさまざまな条件を確認しますが、その中で、実際に新卒で入った人がどれくらい定着しているかも無視できない数字です。
もし新卒100人のうち数年にわたって多くの人が辞めている状態が続いているなら、「なぜ早い段階で辞める人が多いのだろう」と気になるのは自然なことです。
もちろん、離職した理由がすべて企業側にあるとは限りません。転職や家庭の事情、進路変更など、本人側の理由もあります。
そのため、「離職率が高い=悪い企業」とは決められません。
ただし、「離職率が高くても気にしなくてよい」という数字でもありません。
3年以内離職率は、企業を即座に合格・不合格へ分けるための数字ではなく、一定の安心材料として評価するのか、もう少し慎重に調べるのかを決める材料として使うのに適しています。
まず「何人中何人が辞めたのか」を確認する
3年以内離職率を見るとき、最初に確認したいのは割合だけではありません。その数字が何人の採用者から出ているのかも合わせて見ます。
割合だけでなく採用人数を見る
たとえば、新卒採用者が5人の企業を考えてみましょう。
1人が3年以内に離職すれば20%、2人なら40%になります。
一方、100人採用して40人が離職した企業も同じく40%です。
表示される離職率は同じ40%でも、数字の受け止め方は同じではありません。
少人数採用の企業では、一人の離職が全体の割合を大きく動かします。そのため、単年の離職率だけを見ると、実態以上に高く見えたり、逆に低く見えたりすることがあります。
反対に、毎年ある程度の人数を採用していて3年以内離職率が何年も高いままなら、「採用人数が少ないため数字が振れただけ」とは考えにくくなります。
離職率を見るときは、「離職率○%」だけでなく、「新卒採用○人、そのうち離職○人」まで確認できると判断しやすくなります。
こうした採用人数や離職者数をどこで見ればよいか分からない場合は、就職四季報の見方も参考にしてください。
どの年度・世代の数字なのかを見る
もう一つ確認したいのが、どの年度の新卒者を対象にした数字なのかという点です。
3年以内離職率を見るときは、長期間に入社した新卒社員の平均値だと思い込まず、どの年度の新卒者を対象にした数字なのかを確認しましょう。
特定年度の新卒者を基準にしている場合、その年の採用人数や離職人数によって数字が大きく動くことがあります。
また、企業情報を掲載している媒体によって、対象年度や採用者数・離職者数の見せ方が異なることもあります。
数字を見るときは、
- 何年度の新卒者を対象にしているか
- 新卒採用者は何人だったか
- そのうち何人が離職したか
まで確認しておきましょう。「3年以内離職率20%」という数字だけを切り取るのではなく、その20%がどのように出た数字なのかまで見ることが大切です。
1年だけで判断せず、複数年の推移で見る
1年分の離職率だけでは、その企業で新卒が定着しているかを判断しにくい場合があります。
可能であれば、直近だけでなく過去3~5年程度の推移を確認してみてください。
毎年同じ資料が残っているとは限らないため、必ず5年分確認できるわけではありません。それでも複数年確認できれば、単年で見るのとはかなり見え方が変わってきます。
低い状態が何年も続いている場合
3年以内離職率が複数年にわたって低い企業であれば、企業選びのプラス材料の一つとして見てよいでしょう。
もちろん、「離職率が低い=必ず働きやすい企業」とは言えません。
ただ、新卒で入社した人が早期に辞める割合が低い状態を何年も維持していること自体は、学生にとって意味のある情報です。少なくとも「たまたま今年だけ低かった」とは考えにくくなります。
仕事内容や配属、労働条件など他の情報にも問題がなければ、新卒が比較的定着しているという一定の安心材料として評価できます。
高い状態が何年も続いている場合
反対に、同じような条件の企業と比べても3年以内離職率が高く、それが複数年続いている場合は、慎重に確認したほうがよいでしょう。
1年だけなら、少人数採用やその年度特有の事情で数字が動いた可能性もあります。しかし、採用人数がある程度いるにもかかわらず高い状態が何年も続いているなら、「なぜこの企業では新卒が早い段階で辞める人が多いのか」を考えるきっかけにしてよい数字です。
この段階でも、すぐに応募候補から外す必要はありません。ただし、「離職率なんて気にしなくてよい」と流してしまうのではなく、仕事内容や配属、働き方などをもう一段詳しく確認しておきたい企業といえます。
年度によって大きく乱高下している場合
離職率が「5%→30%→10%→35%」というように大きく動いている場合もあります。
このときは、まず採用人数を確認します。
毎年の採用人数が5人前後であれば、1~2人の違いで率が大きく動くため、数字の振れが大きくても不思議ではありません。
一方、毎年一定数を採用している企業で大きな変動が続いているなら、年度によって何が違ったのか少し気になるところです。採用人数が変わったのか、事業環境や採用方法が変わったのか、特定年度だけ離職者が増えた理由があるのか。
すべてを学生側から把握できるとは限りませんが、「今年はたまたま高かっただけです」という説明だけで終わらせず、前後の年度も見れば、本当に一時的な数字なのかを考えやすくなります。
**離職率は1年の「点」ではなく、複数年の「線」で見る。**これが3年以内離職率を読むときの大切な考え方です。
離職率は同じ業界・近い企業規模で比べる
離職率を見るときは、何と比べるかも重要です。
業界が違えば働き方や人の動き方も違いますし、企業規模によって採用人数や職場環境も変わります。そのため、全国の新卒平均だけを見て「平均より高いから危険」「平均より低いから安心」と判断するのは少し粗い見方です。
たとえばメーカーを見ているのであれば、まずメーカーの中で比較します。可能であれば、その中でも近い業種や企業規模の会社と比べましょう。
理系学生が複数のメーカーを候補にしているなら、
- 同じ業界ではどの程度か
- 同じくらいの規模の企業と比べてどうか
- 候補企業の中では高いのか低いのか
を見ると、数字の意味が分かりやすくなります。
大切なのは、離職率について「何%なら安全」という一律の線を引くことではなく、比較する前提をそろえたうえで、その中で目立って高いのか、安定して低いのかを見るという視点です。
離職率が気になったら、数字の背景を確認する
離職率が高い、あるいは年度によって大きく動いていることが分かったら、次に背景を調べます。
ただし、ここで「離職率が高いから育成が悪い」「配属が原因に違いない」と決めつけるのは避けましょう。離職率だけでは、退職理由までは分からないからです。
見るべきなのは、新卒が早期に辞めることにつながりそうな要素に、気になる部分がないかという点です。
仕事内容と採用時の説明が具体的か
まず確認したいのは、入社後の仕事内容がどこまで具体的に分かるかです。
「幅広く活躍できる」「理系の知識を生かせる」といった説明だけでは、実際に何をするのか分からない場合があります。
仕事内容が具体的に説明されているか、若手社員が実際にどのような仕事を担当しているかまで見てみましょう。
離職率が高い企業で仕事内容も見えにくい場合は、入社前後で認識にズレが生まれないか、もう少し調べておきたいところです。
職種・配属・勤務地の不確実性
技術職では、入社後の配属によって仕事内容が大きく変わることがあります。
研究開発を希望していても、設計・生産技術・品質保証など複数の配属先がある。希望する事業分野や勤務地が入社後まで決まらない。こうした企業では、配属の幅を本人がどこまで受け入れられるかも企業選びに関わってきます。
離職率が気になり、さらに配属の不確実性も大きい場合は、配属リスクの考え方で自分の許容範囲を整理してみると判断しやすくなります。
育成の仕組みと若手の働き方
研修制度の有無だけでなく、配属された後に若手がどのように仕事を覚えていくのかも確認します。
たとえば、
- 配属後に誰が仕事を教えるのか
- 若手が相談できる相手がいるか
- 1~3年目で仕事がどう広がるのか
- 若手社員がどのような役割を持っているか
などです。
制度の名前があるだけで実際の育成状況まで分かるわけではありませんが、社員インタビューや説明会などから見えてくることがあります。
労働条件や働き方
仕事内容や育成だけでなく、労働条件も確認します。
勤務地、勤務時間、休日、残業、転勤など、自分の生活に影響する条件です。
離職率が高い原因を学生側から特定する必要はありません。目的は「この離職率が高い理由はこれだ」と決めつけることではなく、離職率が気になる企業だからこそ、入社後のミスマッチにつながりそうな部分を少し丁寧に確認しておくことにあります。
企業情報をどこまで調べればよいか分からない場合は、理系の企業研究で確認する項目を整理すると進めやすくなります。
3年以内離職率を企業比較にどう使うか
最終的には、3年以内離職率を企業比較の一項目として使います。
基本的な見方はシンプルです。
低い状態が複数年続いている企業であれば、新卒が早期離職せず定着しているという点で、一定の安心材料として評価できます。
同業他社と比べて高い状態が続いている企業であれば、仕事内容や配属、働き方などを慎重に確認するきっかけにします。
単年だけ高い企業や数字が大きく動いている企業では、その年の数字だけで判断せず、採用人数や前後の年度を確認します。
たとえば、次の3社があったとします。
企業A
- 新卒採用人数は毎年ある程度いる
- 3年以内離職率は複数年低い
- 同業他社と比べても低い
この場合は、新卒の定着という点ではプラス材料として評価できます。
企業B
- 直近年度だけ離職率が高い
- 新卒採用人数が少ない
- それ以前の年度は低い
この場合は、直近の数字だけで除外せず、採用人数や前後の推移を確認します。
企業C
- 毎年ある程度の新卒を採用している
- 複数年にわたり離職率が高い
- 同業他社と比べても高い
この場合は、仕事内容や配属、働き方などを慎重に確認してから応募や入社を判断したいところです。
ただし、企業Aだから必ず自分に合う、企業Cだから必ず避ける、というわけではありません。年収、仕事内容、勤務地、配属、働き方、キャリアなど、企業を選ぶ条件は他にもあります。
3年以内離職率はその中の一つですが、実際に入社した新卒が早期にどれだけ辞めているかという点では、無視しなくてよい判断材料です。
大切なのは、割合だけを見るのではなく、採用人数・過去の推移・比較する相手まで見ることです。
複数企業の条件を並べて判断したい場合は、理系の企業比較のやり方で、離職率も一つの比較項目として整理してみてください。
まとめ|離職率は気にするべき数字だからこそ、点ではなく線で見る
3年以内離職率は、企業選びで気にしたほうがよい数字です。
せっかく新卒で入社した人が3年以内にどれだけ辞めているかを示す情報なので、明らかに高い状態が続いているのであれば、その理由を確認するきっかけにしてよいでしょう。
一方で、1年分の割合だけを見て企業を判断する必要はありません。
まず、
- 何人採用して、何人辞めているのか
- どの年度の新卒者を対象にした数字なのか
- 過去3~5年でどう推移しているか
- 同じ業界・近い企業規模と比べてどうか
を確認します。
そのうえで、低い状態が続いているなら一定の安心材料として評価する。高い状態が続いているなら、仕事内容や配属、働き方などをもう一段確認する。大きく乱高下しているなら、採用人数や前後の年度を見る。
こうすれば、数字を必要以上に怖がることも、逆に軽く見すぎることも減らせます。
離職率だけで企業を決めない。しかし、離職率を無視して企業を決めない。
3年以内離職率は、単年の「点」ではなく、人数や過去の推移まで含めた「線」で見ることで、企業選びに使える判断材料になります。
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就職四季報の見方
採用人数、離職状況、平均年収など、企業を比較するための数字をどこで確認すればよいか整理したい人向けです。離職率だけでなく、他の企業データも合わせて見たい場合に役立ちます。
理系の企業研究
離職率が気になった企業について、仕事内容、採用、配属、勤務地などをさらに調べたい人向けです。数字から見つけた違和感を、実際の企業研究につなげられます。
配属リスクの考え方
離職率とあわせて職種や勤務地の配属が気になった場合に確認したい記事です。希望と違う配属になった場合、どこまでなら許容できるかを整理できます。
理系の企業選びの基準
離職率をどの程度重視するか迷っている場合は、企業選び全体の判断軸へ戻って考えます。仕事内容、勤務地、待遇などとの優先順位を整理したい人向けです。
理系の企業比較のやり方
離職率を含めて、複数の企業を同じ基準で比べたい人向けです。集めた数字や企業情報を、応募先や志望順位の判断につなげられます。






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