志望動機を考えていると、
「企業が目指している方向には共感できる」 「自分にも将来やりたいことはある」 「でも、この2つをどうつなげればいいのか分からない」
というところで止まってしまうことがあります。
企業理念をそのまま使うと、「理念に共感しました」で終わってしまいがちです。逆に、自分の将来像だけを話すと、「それなら別の会社でもできるのでは」と思われる志望動機になりやすくなります。
ここで、企業のビジョンと自分の将来像を無理に同じ言葉に合わせる必要はありません。
考えるべきなのは、企業が実際に行っている事業や仕事と、自分が将来進みたい方向のどこに接点があるかです。
この記事では、企業のビジョンに自分を合わせにいくのではなく、事業や仕事内容を間に置くことで、両者のつながりを整理する方法を紹介します。
この記事でわかること
- 企業のビジョンと自分の将来像を無理なくつなげる考え方
- 「理念に共感しました」だけでは具体性が出にくい理由
- 事業や仕事内容を間に置いて、自分との接点を探す方法
- 接点が見つからないときに、何を整理し直せばよいか
企業のビジョンと自分の将来像は、無理に一致させなくていい
企業のビジョンと自分の将来像を考えるとき、「同じ方向を向いていることを示さなければ」と意識しすぎると、かえって言葉が不自然になってしまうことがあります。
企業のビジョンは、会社が事業を通じて実現しようとしている方向です。一方で、学生の将来像は、これからどんな仕事に関わりたいか、どんな技術を扱いたいか、仕事を通じてどんな価値を出したいかという個人の方向性です。
そもそも、最初からぴったり一致している必要はありません。
たとえば企業が「持続可能な社会の実現」を掲げていて、自分は「生産現場の効率化に技術で関わりたい」と考えているとします。言葉だけを比べれば同じではありませんが、その企業が省エネ設備や生産自動化の技術を通じて持続可能なものづくりを支えているのだとしたら、そこには自分が関わりたい仕事との接点があります。
志望動機で必要なのは、企業の言葉と自分の言葉を無理に一致させることではなく、「この会社のこの仕事なら、自分が進みたい方向とつながる」と説明できることです。
企業のビジョンと将来像がうまくつながらない3つの理由
企業のことも自分のこともある程度考えているのに志望動機がまとまらない場合、次のどこかで止まっていることが多いです。
企業理念への共感だけで終わっている
企業サイトを読んでいると、
「技術で社会に貢献する」 「新しい価値を創造する」 「持続可能な社会を実現する」
といった理念やビジョンが見つかります。
共感すること自体は問題ではありません。ただ、「その考えに共感した」というだけでは、自分がなぜその企業を志望するのかまでは伝わりにくくなってしまいます。
そこでもう一段深く、
「この企業は、その考え方をどの事業や技術で実現しようとしているのか」
まで見ていきます。
理念をそのまま志望動機に使うのではなく、企業を理解するための入口として使うくらいに考えると、そのあとがつなげやすくなります。
自分の将来像が抽象的すぎる
自分側が、
「社会に貢献したい」 「技術で人の役に立ちたい」 「ものづくりに関わりたい」
というところで止まっている場合も、企業との接点を探しにくくなります。
こうした思いを否定する必要はありませんが、志望動機に使うなら、もう少し仕事に近いところまで具体化しておきます。
たとえば、
「社会に貢献したい」 →「生活を支えるインフラの安全性向上に関わりたい」
「技術で人の役に立ちたい」 →「生産現場の負担を減らす技術に関わりたい」
「ものづくりに関わりたい」 →「製品の性能や品質を高める設計に携わりたい」
という具合です。
壮大な将来の夢を決める必要はありません。どんなテーマや仕事に関わっていきたいかが少し具体的になるだけでも、企業との接点はぐっと探しやすくなります。
企業と自分の間に「仕事内容」が抜けている
一番つまずきやすいのが、企業のビジョンと自分の将来像をいきなり直接結びつけようとするケースです。
たとえば、
貴社の「技術で未来を創る」という考えに共感しています。私も技術を通じて社会に貢献したいです。
だけでは、その会社で実際に何をしたいのかがまだ見えてきません。
そこで、
企業のビジョン ↓ 事業・技術 ↓ 仕事内容・役割 ↓ 自分の将来像
というように、一段ずつ順番につなげて考えます。
企業がどんな事業をしていて、その中で自分がどんな仕事を担いたいのかまで考えると、「なぜこの会社なのか」も自然と具体的になっていきます。
企業との接点は「自分・企業・仕事内容」の3つで考える
企業のビジョンと将来像をつなげるときは、最初から一文にまとめようとせず、3つの要素に分けて考えると整理しやすくなります。
自分は仕事を通じて何を実現したいのか
10年後、20年後まで決める必要はありません。
「生産現場の課題解決に関わりたい」「安全性や品質を支える仕事がしたい」「研究で学んだ知識を製品開発に生かしたい」など、今の時点で関わりたいテーマが見えていれば十分です。
企業は何を通じてビジョンを実現しているのか
企業理念の言葉だけを見るのではなく、事業、製品、サービス、技術のレベルまで下ろして考えます。
「持続可能な社会を実現する」というビジョンひとつをとっても、企業によって省エネ製品、生産自動化、環境負荷を減らす材料、インフラ保全など、実際の取り組みはそれぞれ違います。
その会社でどんな仕事をしたいのか
最後に、自分がその企業のどの仕事を通じて関わっていきたいのかを考えます。
研究開発、設計、生産技術、品質保証など、役割が具体的になればなるほど、自分の将来像と企業とのつながりも説明しやすくなります。
この3つを整理したうえで、実際に言葉に落としていきます。
企業のビジョンと将来像をつなげる4ステップ
いきなり志望動機の完成文を書こうとせず、4つのステップに分けて考えていきます。
ステップ1:将来像を仕事につながる言葉に具体化する
まず、自分の将来像を書き出します。最初は抽象的でも構いません。
たとえば、
技術を通じて社会に役立つ仕事がしたい。
と考えているなら、
「どんな場面で役に立ちたいのか」 「どんな技術に関わりたいのか」 「何を良くしたいのか」
と、少しずつ具体化していきます。
すると、
生産現場の課題を技術で解決し、ものづくりの効率化に関わりたい。
といった、仕事につながる言葉に変わってきます。
ここで必要なのは、きれいな表現ではありません。自分が企業を見るときの物差しとして使える程度まで具体化できれば十分です。
ステップ2:企業ビジョンを事業や技術のレベルまで下ろす
次に、企業のビジョンをそのまま使わず、「具体的には何をしている会社なのか」に変換します。
たとえば、
持続可能なものづくりを支える
という方向を掲げている企業なら、
- どの事業が関係しているのか
- どんな製品や技術を提供しているのか
- 誰のどんな課題を解決しているのか
を確認します。
ここまで見ると、企業のビジョンが単なる抽象的な言葉ではなくなります。
ステップ3:仕事内容を間に置いて接点を探す
ここが一番重要なステップです。
たとえば、
自分の将来像 生産現場の効率化に技術で関わりたい
企業の取り組み 自動化設備によって製造現場の生産性向上を支えている
まで分かったとします。
ここに、
仕事内容 設計職として設備の性能や使いやすさを高める
を加えます。
すると、
自動化設備の設計を通じて、生産現場の課題解決に関わりたい。
という接点が見えてきます。
「企業のビジョンに共感しているから入りたい」のではなく、その企業の具体的な仕事を通じて、自分が進みたい方向へ近づけるという説明になっているのがポイントです。
ステップ4:志望動機に使える骨格にまとめる
最後に、整理した内容を短くまとめます。
基本の流れは、
自分が仕事を通じて実現したいこと ↓ その方向と企業の事業・技術との接点 ↓ その会社で担いたい仕事
の順番です。
たとえば、
私は、生産現場の課題を技術で解決し、ものづくりの効率化に関わりたいと考えています。中でも、自動化設備を通じて製造現場の生産性向上を支えている貴社で、設計職として設備の性能向上に関わりたいと考えています。
という骨格になります。
これだけで志望動機が完成するわけではありません。
実際には、なぜそう考えるようになったのか、自分の経験とどうつながっているのか、その企業のどこに特に魅力を感じたのかなどを加えていきます。
そこまで含めて志望動機全体を整えたい場合は、理系の志望動機の作り方で組み立て方を確認してください。
それでも言葉にならないときは、どこで止まっているかを確認する
4ステップで考えても接点が見つからない場合、文章力だけが原因とは限りません。
どの段階で止まっているかによって、整理し直す内容が変わってきます。
自分側の言葉が出てこない場合
「何をしたいのか」と考えても、
「ものづくりに関わりたい」 「技術で人の役に立ちたい」
というところから先に進めないなら、自分の方向性をもう少し整理する必要があります。
どんな経験に興味を持ったのか、仕事で何を重視したいのか、どんな技術や仕事内容に惹かれるのかを見直してみます。
この場合は、企業との接点を無理に作ろうとするより、まず自分側の材料を整理し直したほうが進みやすくなります。
企業側の言葉が出てこない場合
企業理念は知っているのに、
「この会社は実際に何を通じてその方向を実現しているのか」
が説明できないなら、企業理解がまだ浅い可能性があります。
理念だけでなく、事業、製品、技術、顧客、仕事内容まで確認しましょう。
企業に詳しくなること自体が目的ではなく、自分との接点を判断できる情報を集めることが大切です。
両方あるのに、うまくつながらない場合
自分がやりたいことも、企業が行っていることも分かっているのに接点が見つからないなら、仕事内容の理解が曖昧なことがあります。
同じ企業でも、研究開発、設計、生産技術、品質保証などでは関わり方がまったく変わります。
「この会社で働きたい」だけでなく、「その会社でどんな役割を担いたいのか」まで考えてみてください。
AIを使うなら、接点の候補を整理するところまで
AIには、将来像の言い換えや企業情報の整理、自分と企業の接点候補の洗い出しなどを手伝ってもらえます。
ただし、AIが出した接点が本当に自分の考えと合っているか、面接でも自分の言葉で説明できるかは、自分で確かめる必要があります。
AIに志望理由そのものを決めてもらうのではなく、考えるための候補を整理する壁打ち相手として使うくらいがちょうどよい使い方です。
まとめ
企業のビジョンと自分の将来像をつなげるとき、両方を無理に同じ言葉に合わせる必要はありません。
まず自分は仕事を通じて何を実現したいのかを整理し、次に企業はどんな事業や技術を通じてビジョンを実現しているのかを確認します。そのうえで、この2つの間に自分が担いたい仕事内容や役割を置きます。
この3つがつながれば、
この企業のこの仕事なら、自分が将来進みたい方向と接点がある
と説明できるようになります。
「理念に共感しました」という言葉をもっときれいにすることが目的ではありません。
企業に自分を合わせるのでもなく、自分の将来像だけを押し出すのでもなく、その会社の実際の仕事を通じて、自分がどの方向へ進みたいのかを説明できる状態を作ることが、この記事でのゴールです。
次に読むべき関連記事
理系の志望動機の作り方
この記事で整理した企業との接点を、自分の経験や「なぜこの会社なのか」とつなげ、志望動機全体へまとめたい場合はこちらへ進みます。
理系の自己分析完全ガイド
企業との接点を探す以前に、自分がどんな仕事や方向へ進みたいのかがまだ曖昧な場合は、自分側の材料から整理します。
理系の企業研究
企業理念は理解できても、実際の事業・技術・仕事内容がよく分からない場合はこちらへ進みます。企業との接点を考えるために必要な情報を整理できます。
理系職種の違い
企業と自分の方向性は見えているものの、「その会社でどんな仕事をしたいのか」が決まらない場合はこちらへ進みます。研究・開発・設計など、職種ごとの違いから整理できます。





コメント